音源より先に決まるもの
同じ曲でも、電車の中で安価なイヤホンで聴けば、音源の品質差はほとんど現れません。騒音が混じり、再生機器がその差を表現できないからです。順番を入れ替えて考える方が実用的です。イヤホンと聴く環境を先に改善し、その後で音源の品質を上げる方が体感の変化は大きくなります。音は音源から再生アプリ、機器内部の処理、接続方式、イヤホンを経て耳に届きますが、この鎖のいちばん弱い輪が全体の品質を決めます。
数字が大きいほど良い音とは限りません。非可逆と可逆圧縮の違い、品質表記の読み方、無線でボトルネックになるコーデック、音量を揃えた比べ方を整理しました。
同じ曲でも、電車の中で安価なイヤホンで聴けば、音源の品質差はほとんど現れません。騒音が混じり、再生機器がその差を表現できないからです。順番を入れ替えて考える方が実用的です。イヤホンと聴く環境を先に改善し、その後で音源の品質を上げる方が体感の変化は大きくなります。音は音源から再生アプリ、機器内部の処理、接続方式、イヤホンを経て耳に届きますが、この鎖のいちばん弱い輪が全体の品質を決めます。
非可逆圧縮は人が聞き取りにくい部分を削って容量を減らす方式です。圧縮率が低いほど原音に近くなりますが、ある水準を超えるとほとんどの環境で聞き分けが難しくなります。可逆圧縮は原音をそのまま復元する方式で、品質の損失がない代わりに容量が数倍になります。
配信サービスやファイルにはいくつもの数字が付いていますが、それぞれ意味が違います。ビットレートは圧縮された音源のデータ量を、サンプリング周波数と量子化ビット数は圧縮前の原音をどれだけ細かく記録したかを表します。一般にCD品質と呼ばれるのは16ビット、44.1kHzで、これより高い数値をハイレゾと呼ぶことが多いです。数字が高いほど入れられる情報の上限は上がりますが、その差を実際に聴き取れるかは機器と耳、環境しだいです。
Bluetoothは音楽をそのまま送れず、圧縮して伝送します。このとき使う方式がコーデックで、機器とイヤホンが同じコーデックに対応して初めてその性能が出ます。どれだけ良い音源を再生しても接続の区間で圧縮されるため、無線では音源の等級を上げるよりコーデックが合っているかを見る方が実質的です。機器の開発者向けオプションや接続情報の画面で、いま使われているコーデックを確認できる場合もあります。電波の干渉が強い場所では、途切れを防ぐために自動で品質が下がることもあります。
同じ曲を二つの方式で比べるとき、少しでも大きい方がよく聞こえます。人の耳が音量の差を品質の差と取り違えるからです。比べるなら音量をできるだけ揃えた状態で、どちらか分からないまま聴いてみるのが、まだしも公平な方法です。
他人の評価より自分の耳で確かめるのがいちばん確実です。高いプランや機器にお金を使う前に、次の手順で一度試してみれば、自分の環境で何に意味があるかがすぐに分かります。差が聞こえないなら、そのお金はイヤホンなど別のところに使うほうがよいということです。
音質には誤解がつきものです。数字が高ければ必ず良く聞こえるという考え、高価なケーブルが音を大きく変えるという考え、ワイヤレスイヤホンでも可逆圧縮の差がそのまま伝わるという考えが代表的です。また高音質の設定をオンにしていても、アプリのデータ節約モードや移動中の設定のせいで、実際には低い品質で再生されていることもよくあります。設定画面で、無線LANとモバイル通信それぞれの品質を別々に確認する習慣をつけるとよいでしょう。
音源の品質表記は上限を示すだけで、録音とミックスがどうだったかは教えてくれません。よく作られた音源は低い品質に圧縮しても聴きやすく、うまく作られていない音源は可逆圧縮でも詰まって聞こえます。数字だけで選ぶ前に、実際に聴いてみる方がよいでしょう。そして音質にこだわるあまり音量を上げて長く聴くようになったら本末転倒なので、耳が疲れたと感じたら休むようにしてください。